第11回〜第15回 

第11回 「プラスチック塗装編3」

師匠:
「前回、前々回とプラスチック塗装について、主に
塗料の違いを説明してきたが、2回にわたったので
解りにくかった点もあると思う。ここでまとめてみよう。」

05:
「そうこなくちゃ!講義の間隔が開くから、つながりが悪くって・・」
師匠:
「まあ、そういうな。都合があるのだ、都合が・・」

05:
「仕事以外は暇なくせして!」
師匠:
「えーい!もうええちゅーんじゃ。」

05:
「はい、今日は素直。」
師匠:
「・・・塗料毎の長所と短所をまとめてみよう。
ラッカー(Mrカラーなど)
長所・乾燥が早く作業効率がよい。
  ・塗膜が強く多少の衝撃では色は落ちない
  ・メタリックの発色は水性アクリルよりは良好
短所・乾燥が早いため筆ムラがでやすい
  ・溶剤を使うため体には良くない。
  ・全体に発色はエナメルより劣る。

エナメル(タミヤカラーなど)
長所・筆塗りののびが良くムラになりにくい
  ・発色がかなり良好。メタリック系の発色は他の塗料系には表現できない。
  ・下地の塗料を侵すことがない。
短所・乾燥時間が長いため作業性に劣る。ほこりなどもつきやすい。
  ・塗膜の強度が低い。擦ったり触れると取れることもある。
  ・下地として使うと上にラッカー系を塗装できない。

水系アクリル(グンゼ水性カラーなど)
長所・洗いに水が使えるので安全性が高い。そして乾くと水には溶けない。
  ・ラッカーと同等の発色を持つ。
短所・メタリックなどやや発色が劣ることがある。
  ・やや乾燥時間が長い。
  ・筆塗りではムラが発生しやすい

といった点が主なところだ。」
05:
「これらをふまえて使い分けが出来るといいんですね」
師匠:
「そうだ、ただやはり健康や体に気をつける人には
水性が最も適していると思う。溶剤は体に良くないからな。」

05:
「解った!で、師匠は水性をあまり使わないから
そういうふうになったんですね!」
師匠:Untitled Document
「どういう意味だ!!!」

05:
「ハイ!今日はこれまで!それじゃ、また」

(つづく)

第12回 「木工塗装編−スペシャル−」

師匠:
「今日は木工塗装だ。何故か自信あり!だな。」

05:
「なぜ?木工塗装なんかほとんどやったことないんじゃないですか!」
師匠:
「はっはっは!なんと今回は自分では解らないので、解る人に
聞いているのだ。みんなもよく知っている人だから参考になると思うぞ。」
05:
「えーっ、誰なんですか?教えて〜」
師匠:
「訳あってそれは言えないが、二人から聞いてあるんだなーこれが。」
05:
「早く教えて下さいよ。早く!」
師匠:
「よし解った!私の質問はこうだ
(1):木工塗装で木目を生かす場合はどのような工程で塗装していますか
(2):その逆に木目を消して塗装する場合はどうでしょうか。
の2点だ。

まずは一人目の方A師匠からだ。
(1)についてはあまりそのようなことはしないそうです。

>ただ唯一、ハウスの床のみ目打ちで傷をつけてロットリングで墨入れし、
>リキテックスで薄く色をつけてから、あとはバーッと透明ラッカーの艶ありを
>かけてしまいます。(メーカーカンペハピオ、斜めにラッカースプレーA 300ml
>と書いてあります。)
>ニスは一応スプレータイプを持っていますが、乾きが遅いので使いません。

とのこと。ちなみにどうして「木目を生かした塗装はされないのですか」
という質問に対しては

>私がめざしているのは、絵画的、イラスト的リアルだからです。
>それとね、樹脂をいかに木に見せるかとか、そっちの方が、楽しいんです。

ということです。さすが!
(2)については、

>これはですね、ホワイトなどの薄い色を塗る時は吸い込みだけでなく、彩度が
>落ちないようにするため、始めにとの粉がわりに艶消しクリアーをかけて
>そのあと、最近はホワイトサーフェイサーをかけちゃってますね。
>下地を透かさない色の時はサーフェイサーをかけません。

>それからラッカー系のカラースプレーをかけてますが、壁などの場合はほとんど
>ヤスリなんかかけません。(カントリースタイルの場合)
>同じ壁でも普通の部屋の場合はヤスリをかけるのですが・・。
>家具の場合はヤスリをかけています。
>汚し、模様のみアクリル絵の具です。

ちなみに使われているスプレーなどは

>艶消しクリアーは日本油脂のものです。
>カラーのラッカースプレーはカンペのや、プラモデル用、鉄道模型用、カーモデル
>用などを使っています。

ということです。
どうだ、参考になるだろう。」

05:
「すごいです!師匠のいうことなんか話になりません」
師匠:
「今回は怒ることができないな〜、本当だから。
じゃ次はB師匠に聞いてあるぞ。同じ質問だ。
(1):については

>塗る前に、ペーパーがけをすることは前提です。

>マクロスキーのコントロール・シーラーを塗ってから、
>オイルステインで着色します。
>も・の・す・ご・い・においがしますが、
>コントロールシーラーを塗るのとそうでないのは全然違います。

>広い部分はボロ布を使って、着色しています。
>筆だとどうもムラになりやすい気がします〜
>ステインのメーカーは特に色々試したことはないので、
>なんとも言えないのですが、今手元にあるのは
>「サンデーペイント」のもの。

という工程を取っているそうです。ちなみにコントロールシーラーとは

>正式名は、ステインコントローラー&ウッドシーラー
>といいます。アメリカ製です。

>オイルステインで着色をする前に塗るもので、
>木地を整えるというか、落ち着かせるというか、
>とにかく、これを塗ると、しっくりとオイルステインがのるんです。
>ムラも少なくなるんです。

>ほら、木って、木目によって、すごく塗料をすいこんでしまう
>部分と、木目が詰まっているところはなかなか塗料が浸透しなかったりしますよね?
>そういう部分をなるべく平均的にならすのです。

うーん、そういう物をあることを知らなかったなー。
それじゃ(2)については
>リキテックスのジェッソを下地剤として塗り、木目を消します。
>上塗りはすべてアクリル絵具です。
>「Folk Art」 社の色が気に入っています。
>ちなみにニスは「Jo Sonja」製がお気に入り。

>いずれもユザワヤなどクラフトストアで売ってます。」

05:
「やり方は違うけれどやっぱりすごい!早速試してみたいです」
師匠:
「これらを参考にして自分のやり方を見つけるといいんじゃないかな」

05:
「次からは師匠の話はいいから、A師匠とB師匠に話を聞いてきて下さい!」
師匠:
「ご多忙のお二人にそんなことはできん!私の話で我慢しなさい!」

05:
「そうですよね〜。それじゃまた。感想とかあったらMLでね。」
師匠:
「私も望んでます、では」

(つづく)

第13回 「スケール効果編」

05:
「あのー、今日の題は『スケール効果』ということなんですが
塗装となにか関係あるんですか?」
師匠:
「そう、大ありだ!スケール効果とはもちろん縮尺したときに
発生するもの。色の世界でもミニチュアと実物は同じものでないから
同じ色だとしても異なった感じを得ることがある。」

05:
「うーん、解るような気もしますけど具体的に教えて下さい!」
師匠:
「うむ、うむ。
時々『実際と同じ色を塗ったはずなのに、何か違和感がある』
なんていうことを聞いたりあるいは自分で感じたりしたことが無いだろうか。
要は実際より小さいため、同じ色を塗装すると明度が低く見えてしまう、
すなわち黒っぽく(沈んで)見えるのだ」

05:
「確かに、そんな気もしますね。実物に使う市販の色をそのまま
ミニチュアに使うと全体に色が濃くなることがありますよね」
師匠:
「時々『実物と同じ塗料を使い、色味も全く同じにしました!』
と自慢げにいう人があるが、わたしはあまり感心しない。
縮尺が違うのに、なぜ塗装だけは同じにしようとするのだろうか?
ミニチュアとしての塗装を考えてもいいのではないだろうか。
まあ、ここまでくるとミニチュアに対する考え方の違いと
なってしまい、人それぞれの考え方によるところが大きいが。」

05:
「そうですか・・。それじゃ、どのようにしてこのスケール効果を
なくしているのですか?」
師匠:
「単純だが、これをなくすために明るい方向に色を作って塗装する
のが一般的だ。この作業は簡単なようだが、スケールにあった明度調整は
センスを要する作業かもしれないな。」

05:
「ミニチュアは小さいから、平面が少なく、光の当たり方が違うし、
自分の見る位置も違うのでそう見えるんでしょうか?」
師匠:
「そのとおり。さらに1/12の縮尺のものを1メートル
離れてみているとすると、実際は12メートル離れて見ることになる。
その空気(チリやほこり)の効果で白っぽく見え、かつ彩度が下がる
ともいわれている。」

05:
「ふーん、じゃあ、結論としては、元のそのままの色よりも白っぽく、
あるいは、元の色よりも彩度を少し落とすと良くなるということですね。」
師匠:
「確かにそうだが、実感という点でわたしはその方法よりも違う手法を
使った方がいいと考えている。」

05:
「なんですか、それは??」
師匠:
「そう、ここからはみんなが思っているように次回だな」

05:
「えーーーーー」

(つづく)

第14回 「立体感編」

05:
「師匠!あんまり休みが長いんでどっか行ってしまったのかと
思いましたよ」
師匠:
「いやー、すまん!すまん!正月ボケがなおらなくて・・・
前はどんなはなしじゃったかのうぉ・・よしこさんや・・」

05:
「おいっ!ぼけとんのか!いい加減にせい!
前回は、スケール効果のことで、あんたがそれとは違う手法をつかうって
いうところで終わったんだよ!」
師匠:
「・・冗談なのに・・。(・・どんどん口が悪くなるなー・・)」

05:
「ぶつぶつ言わずに始めなさい!」
師匠:
「はいはい・・
前回のスケール効果では色の面だけで考えたが、
今回は『立体感』を考えてみよう。すなわち立体には光があたり
そして明るいところができると同時に影のところもできる」

05:
「そんなの当たり前です。云われなくても解りますよ。」
師匠:
「まあまあ、ここからが、『光のスケール効果』いえるもので
もし実物の溝が5cmなら、ミニチュアの溝は1/12で
約4mmとなる。そうすると同じ光の当たったとき5cmのときに
できる影と4mmの時にできる影はおおきく異なり、当然4mmだと
影の付き方が薄くなってしまう。」

05:
「そうすると・・ミニチュアのほうが陰影が薄くなる・・
『立体感』がなくなると云うわけですね!」
師匠:
「そのとおりだ。経験があると思うが、ミニチュアの場合の
ミニチュアらしさ(かわいらしさ)とはこの立体感のなさ
と云うところも要因としてあるのだ。」

05:
「ふーん、とするとミニチュアらしさの追求は『実感』と
相反する点がある・・」
師匠:
「実感や立体感を表現すると『ありのまま』の表現に
近くなり『ミニチュアとしてのかわいさ』は少なくなる・・、が、
どんな表現を用いたいのかは、作者が何を表現したいのかで選べばよいと思う。」

05:
「自分の表現したいものに対してそれにあった表現方法を使う。
これが作り手の醍醐味でもあるんですね〜。」
師匠:
「わかっとるじゃないか!さすが私の弟子!
で、実感を表現する方法の代表的な2つの方法を次に述べよう。
その2つはもともと実感の中でも『汚し』という
表現方法から来たのものと思われる。
それは『スミ入れ』と『ドライブラシ』だ。」

05:
「あのー、手法の説明に入る前にすでに時間切れですが・・・」
師匠:
「なぬーっ、しまった!すまん!また次回につづく!」


(つづく)

第15回 「立体感実践編−スミ入れ−」

師匠:
「あーまた、長いこと休んでしまったなー。なんだったっけ?」

05:
「はっきり言ってみんなから忘れられてますよ!もともとあんまり
役に立ってないのに!!」
師匠:
「・・そんなはっきり・・いわなくても・・わかってるのに・・」

05:
「何をぶつぶつ言ってるの!今回は立体感塗装の実践、
『スミ入れ』『ドライブラシ』の技法説明でしょ。」
師匠:
「なんだ!良く覚えているじゃない!それじゃ!バーイ!
って帰っている場合じゃないんだよね〜。
・・まじめにまずは『スミ入れ』から。
読んで字のごとくスミ入れはスミを入れてシャドウ(影)をつけること。
プラモではエナメル系の塗料を使うことが多いな。この理由は後で説明する。
まずは黒あるいはダークグレーを普段塗装するよりもかなりしゃぶしゃぶに
薄める。筆で塗っても色が付くか付かないくらいにだ。
そしてそれで塗装物の全面に塗装する。こうすると窪んだところや
凹などに毛管現象によって黒がたまることになる。
逆に平面部や凸には黒がつきにくい。これで立体の陰影が強調される。」

05:
「じゃ早速・・、師匠!なんか全体に汚らしくなって
かわいくないのですけど・・」
師匠:
「元は汚しの技法だからなー、致し方ない点もあるが、塗装したあと汚したくない
ところは、綿棒やティッシュで拭き取るとだいぶきれいになる。もちろん
タイミングが遅すぎてとれにくい場合は、エナメル用のシンナーを使うときれいに
なるが、影がついて欲しい部位もきれいになったりすることもあり、
これは慣れが必要だな。」

05:
「どうしてエナメル塗料を使うのですか?」
師匠:
「エナメル塗料を使うというより、これはセットで考えて欲しい。
すなわち、本体の塗装にはラッカーを使い、スミ入れにはエナメル塗料を
つかうということだ。ラッカーはエナメルのシンナーに侵されることがなく
スミ入れでシンナー付けにしても本体の塗装がやられることがない。
ちなみに水系アクリルを本体に使うとたぶんエナメルのシンナーでやられて
塗膜がとける可能性が高いので、やめた方がいい。(もしかすると
大丈夫なものもあるかもしれない)」

05:
「うーん、実際やってみてもなかなかきれいに
うまくスミ入れできないんですけど・・」
師匠:
「結構、シンナーのうすめ方にコツがある。これは
『習うより慣れろ』だな。また少し濃いめで塗装するように
シャドウを入れるという方法もあるが、これはわざとらしく
なりがちなのでさらに慣れを要するだろう。まずは自分の
納得のいくスミ入れをあみ出すのが一番だな。」

05:
「失敗しちゃった〜。どうしてくれんのさ!」
師匠:
「あわてるな!エナメルシンナーで徐々に拭けばかなり元通りになる。
やり直しがきくのがこのラッカーとエナメルの組み合わせのいいところ
でもあるのだ。
 それともう一つ、黒やダークグレーだけでなく本体の色に合わせた
シェイドの色を使うのもいい手だ。茶系統なら黒にブラウンを混ぜるとか。
こうするとわざとらしさが少なくなって上品に仕上がる。」

05:
「まず自分がどう表現したいか?をよく考えてから使う手法ですね。」
師匠:
「そのとおり!『かわいいっ!』というものには全く向いてないな、こりゃ」

(つづく)